HorseIQ

HORSE RACING AI ANALYTICS
RESEARCH

研究コラム

競馬をデータとAIで読み解く読み物。すべて実データ・実検証に基づきます。

COLUMN 01

AIで競馬は「勝てる」のか — 5年17,276レースで検証した、正直な結論

結論から言うと、機械学習をどれだけ工夫しても、オッズ(市場)を安定して上回る買い方は見つかりませんでした。その過程を数字で残します。

HorseIQは2021〜2025年の中央競馬17,276レースを対象に、単勝・枠連・馬連・ワイド・馬単・3連複・3連単まで、あらゆる券種と買い方を機械学習で探索しました。探索(2021〜2023年)→条件固定(2024年)→最終検証(2025年)と年で厳密に分け、最終年は一度だけ開封する後出しなしのプロトコルで検証しています。

その2025年ホールドアウトでの回収率がこちらです。

券種・構成2025年 回収率点数
単勝78.0%1,191
枠連95.9%379
馬連(単点)85.7%2,193
ワイド(多点)78.0%6,048
馬単(単点)93.5%531
3連複(多点)80.0%480
3連単(多点)74.6%68,928
2025年最終ホールドアウト。控除率(概ね20〜30%)の壁をどの券種も越えられていない。

ほぼすべてが回収率100%を大きく下回りました。唯一、3連単を「5番人気→3番人気→6番人気」の順で買う一点だけが5年通算244%と光りましたが、17回の的中に依存し、後から上位パターンだけを選んだ選択バイアスの疑いが濃く、正式採用には至りませんでした(詳細はコラム05)。的中率を上げる3連複4条件ポートフォリオも5年通算104.8%どまり、2025年単独では94.2%でした。

つまり「AIだから勝てる」わけではない、というのが誠実な結論です。競馬のオッズには、無数の予想家の知恵がすでに織り込まれていて、そう簡単には超えられません。HorseIQが評価を「買い目」ではなく「市場との乖離の観察」として提供しているのは、この検証結果に基づいた立場です。

COLUMN 02

1番人気はなぜ飛ぶのか — データが示す「危ない条件」

1番人気が3着以内を外す確率は、5年平均で35.1%。7回に約2.5回は馬券圏外に消えます。では、いつ特に危ないのか。

HorseIQのリスクモデルは「1番人気が3着以内に入らない確率」を直接推定します。2025年検証での的中相関(AUC)は0.663で、危険度が高いと判定した上位20%のレースは、実際の非3着内率が53.5%(平均35%の約1.5倍)に達しました。予測が当たっていることは、10分位ごとの実測とのズレの小ささでも確認できています。

では何がリスクを押し上げるのか。モデルの特徴量重要度を見ると、上位は市場構造でした。

要因寄与度
市場全体の混戦度(人気の割れ)24.5%
1番人気の市場占有率17.1%
1番人気の単勝オッズ15.8%
騎手の直近成績3.6%
血統(父・母父)合計4.8%
寄与度であり因果ではない。だが傾向は明快。

要するに、人気が割れて混戦のレースほど、単勝オッズが甘い1番人気ほど、飛びやすい。逆に、支持が1頭に集中し、オッズも低い「鉄板ムード」のレースは、実際に堅い傾向があります。馬個体の近走や血統も効きますが、まず効くのは"オッズの形"だというのがデータの答えです。人気だけを見て1番人気を信用する前に、そのレースがどれだけ割れているかを見る価値があります。

COLUMN 03

AIと市場、どちらが賢いのか

全馬の複勝圏を推定するモデルの精度(AUC 0.820)は高い。しかし「市場の人気順」と比べると——ほぼ互角でした。

2025年の3,455レースで、AIが選んだ上位3頭のうち実際に3着以内に入った割合は53.16%。同じ指標を市場人気上位3頭で測ると53.15%。AI最上位1頭の複勝率64.7%に対し、1番人気の複勝率は65.2%。ほとんど差がありません

これは失敗ではなく、むしろ市場(オッズ)がいかに優秀な"集合知"かを示しています。だからHorseIQは、AIで市場を置き換えようとはしません。代わりに「AIと市場の見立てが食い違う場所」を可視化します。両者が一致していれば信頼度が高く、割れていれば——そこが人間の判断や、さらなる研究の出番です。当たり前を裏取りし、例外を浮かび上がらせる。それがデータで競馬を読む面白さだと考えています。

COLUMN 04

控除率という見えない壁 — なぜ「買うほど平均は負ける」のか

競馬で最初に理解すべきは、予想の巧拙より前に存在する"手数料"の話です。

JRAの馬券には券種ごとに控除率が設定されています。単勝・複勝は約20%、3連単など難しい券種ほど高く、概ね20〜30%が主催者側に差し引かれます。つまり、参加者全員が投じた100円のうち、払い戻しに回るのは平均70〜80円。これが「何も工夫しなければ、長く買うほど残高は控除率の分だけ減っていく」という数学的な出発点です。

コラム01で示した各券種の回収率が軒並み100%を割っていたのは、モデルが弱いから、というよりこの壁を越えられなかったから、という側面が大きい。予想を当てることと、控除率を超えて利益を出すことは、まったく別の難易度です。買い目を増やせば的中率は上がりますが、その分だけ多く買っているので、回収率はむしろ控除率のライン(70〜80%)へ近づいていきます。

この壁を意識すると、競馬の見え方が変わります。HorseIQが「予想を売る」のではなく「データを観察する」立場を取るのは、控除率を安定して超える手段を、5年の検証でも見つけられなかったからです。楽しみとして張るなら、まず"見えない20%"の存在を知っておくことをおすすめします。

COLUMN 05

なぜ3連単だけ回収率が跳ねたのか — 少数的中と「選択バイアス」の罠

5年で回収率244%——一見すると"勝ち筋"に見えた候補が、なぜ採用されなかったのか。データ分析で最も陥りやすい罠の話です。

探索の中で、3連単を「5番人気→3番人気→6番人気」の順に買う一点が、5年通算244.3%という数字を出しました。利益にして約64万円、悪くない響きです。しかし内訳を見ると、5年間・4,411点でわずか17回の的中。1回の的中が回収率を大きく動かす、非常に不安定な構造です。

さらに重大なのは、これが「上位8人気の336通りのパターンを全部試して、後から一番良かったものを選んだ」結果だという点。無数に試せば、偶然よく当たったパターンは必ず出ます。これを"発見"と呼んでしまうのが選択バイアスです。実際、周辺の似たパターンまで広げて評価すると回収率は90%前後、全336通り平均では75%まで落ちました。優位性は"その一点"にほぼ完全に依存していたのです。

データ分析では、都合のいい数字ほど疑う必要があります。HorseIQがこの候補を「有望だが不採用、前向きの的中が積み上がるまで紙上記録のみ」としたのは、この罠を避けるためです。派手な回収率を見たら、まず「何回当たった上での数字か」「後から選んでいないか」を問う——これは競馬に限らず、あらゆるデータ分析の基本作法です。

COLUMN 06

機械学習で競馬を予想する手順 — 特徴量・検証・落とし穴

「AIで競馬」と聞くと魔法のようですが、中身は地道な手順の積み重ねです。HorseIQの作り方を通して、その全体像を紹介します。

① データを集める。 JV-Link(JRA-VAN)から過去レース・出走馬・オッズ・払戻を取得します。HorseIQは2021〜2025年の17,276レースを土台にしています。

② 特徴量を作る。 生データをモデルが読める数値に変換します。過去複勝率、距離補正した速度指数、騎手・厩舎の直近90日成績、父・母父の産駒成績、坂路調教のタイム、馬場/距離適性など。重要なのは「当日以前に確定していた情報だけ」を使うこと。結果を知った後の情報を混ぜれば、検証は簡単に嘘をつきます。

③ 学習して検証する。 勾配ブースティング(LightGBM)で学習し、精度をAUCなどで測ります。ここで最大の落とし穴が「未来を覗く」こと。学習に使ったデータで精度を測れば当然良く見えますが、実戦では役に立ちません。HorseIQは年で厳密に分け(探索→固定→検証→前向き)、最終年は一度だけ開封します。

④ 過信しない。 コラム05のように、偶然の良い数字を"発見"と誤認しないこと。そして控除率(コラム04)という壁を忘れないこと。この2つを踏み外すと、机上では勝てるのに実戦で負ける"典型的な失敗"に落ちます。地味ですが、この規律こそが機械学習でデータを扱う核心です。

COLUMN 07

オッズは何を知っているか — 市場効率と情報の織り込み

オッズはただの人気投票ではありません。無数の参加者の情報と判断が集約された、驚くほど精度の高い"予測装置"です。

コラム03で見たように、AIの複勝圏予測は市場人気とほぼ互角でした。これは偶然ではありません。オッズには、調教を見た人、血統に詳しい人、厩舎の事情を知る人、そして計算機を回す人——あらゆる立場の情報と資金が流れ込み、リアルタイムで一つの数字に凝縮されています。経済学で言う「市場効率」が、競馬のオッズにもかなりの程度成り立っているわけです。

だからこそ、オッズを"軽視"するのも"盲信"するのも危うい。HorseIQのアプローチは、オッズを基準(ベンチマーク)として与えたうえで、モデルがそこからどれだけ・どちらへズレるかを見ることです。市場とAIが一致する馬は信頼度が高く、大きく食い違う馬は、市場が見落としているか、逆にモデルが外しているか——そのどちらかを問う出発点になります。オッズという集合知を"読み解く道具"として使う。それが、勝ち負けとは別の、データで競馬を楽しむ視点です。

COLUMN 08

AIが苦手なレース — 混戦・少頭数・新馬戦

モデルにも得手不得手があります。どんなレースで予測が難しくなるのかを知ることは、AI評価を読むうえで欠かせません。

混戦(人気が割れる)

支持が分散するレースは、そもそも結果の不確実性が高い。オッズもAIも自信を持ちにくく、上位評価の複勝圏確率が団子になります。コラム02の通り、1番人気の飛びやすさも跳ね上がる領域です。

少頭数

頭数が少ないと相対順位の情報量が乏しく、わずかな差で順位が入れ替わります。相対指数の差が小さいレースは、順位を過度に真に受けないのが賢明です。

新馬・情報の薄い馬

過去走のない新馬や、長期休養明けの馬は特徴量が欠けます。HorseIQは「情報充足」が低い馬にその旨を表示します。データが薄いところでは、モデルの評価も控えめに読むべきです。

逆にAIが得意なのは、頭数が揃い、各馬に十分な実績データがあり、市場の支持もある程度分かれている——情報が豊かなレースです。AI評価を鵜呑みにするのではなく、「このレースはモデルが得意な条件か」を一度考える。その一手間が、データを賢く使うコツです。

本サイトは競馬データのAI分析・研究情報であり、馬券の購入を推奨・助言するものではなく、的中や利益を保証するものでもありません。掲載の数値はすべて過去〜前向き検証の結果です。馬券は20歳以上・自己責任で。

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